相続&贈与
相続を迎えて「親の財産がどこにどれだけあるかわらず困った」といった話はよく耳にします。亡くなられた親御さん(=被相続人)がすべての財産を管理していて、子どもたちは手出しできないケースで見受けられます。ところが、相続人同士での遺産分割の話し合いや相続税の申告などは相続財産のすべてわからないとできませんし、相続争いにも発展しかねません。
そこで今号では、相続財産の所在が判らないときの”相続財産の捜索ポイント”をご紹介しましょう。
まずは、人付き合いのチェックから!
「人とのつながり」は社会生活の基本です。被相続人は身近な人たちに様々な相談していますので、つぎの人たちを手がかりとして、財産関連情報を引き出す余地があります。
◆ 相談先:顧問税理士や弁護士
被相続人が個人事業・不動産賃貸や会社経営をしていれば、財産の内容や状況をよくご存じの顧問税理士や弁護士がいるはずです。特に税理士なら、所得税の確定申告書の作成などを通じて顧問先の被相続人の事業関連の不動産など財産や債務を熟知しているはずですので、最優先でコンタクトすべき先でしょう。
◆ 経営者やサラリーマン:会社の総務や人事担当者
役員や社員として会社に勤務していたなら、「死亡退職金や弔慰金、会社からの借入金などの情報」を会社の担当部署(一般には、人事・総務や経理)に尋ねるのが一番です。親切に教えていただけます。
◆ 身近な先:兄弟や親類、友人など
親しかった兄弟や親類、友人に聞いて回ることも一つの方法です。特に、被相続人のオカネの貸し借りなどがわかるかもしれません。といっても、片端から聞いて回るのはトラブルの種をまき散らすことにもなりかねません。話を聞くべき相手を選ぶこともお忘れなく。
書類の収集・整理で、財産にたどり着く!
被相続人の手元に残されていた書類などを頼りに財産を捜すのも、遠回りのようですが効果的です。
具体的には、つぎのようなやり方が挙げられます。正式な契約書や証書でなくても、被相続人の手帳やメモ帳などに相続財産の手がかりが残されているケースも。
● 土地や建物などの不動産なら
不動産は、毎年春先に送られてくる”固定資産税の納税通知書”を探すとよいでしょう。納税通知書の発送元の自治体(市町村)で”名寄せ帳”を入手すると、被相続人の所有不動産が一覧表化されていますので、これを元に不動産の所有状況がわかります。
● 預貯金など金融資産なら
銀行なら預金通帳、証券会社では取引報告書などが残されていれば、過去に何らかの取引があったことがわかります。その上で、取引があったと思われる金融機関に死亡日現在の残高証明書の発行を依頼すれば良いのです。もし取引がなければ、残高証明書は発行されません。なお、自宅近隣の郵便局を含む金融機関については残高証明書の入手依頼をかけてみましょう。思いがけない預金が遺されているかも知れません。
● 所得税の確定申告書の確認
過去の所得税の確定申告書も有力な手がかりの一つです。
具体的には、配当所得があれば株式を持っていた証拠に、また、配当所得の内訳に証券会社名があれば捜すのも容易です。不動産所得や事業所得も、収入の内訳書や減価償却費の計算明細を参考にするとお持ちの不動産が確認できます。
ネットバンクやネット証券での財産は?
高齢者といっても今どきはインターネットを頻繁に利用されている方も多く、ネット系金融機関での取引もチェックが必要です。ネット系金融機関の特徴は書類のやりとりがほとんどない点にありますが、相続財産はつぎのような方法で確認できます。
● メールチェックが第一歩!
ネット系金融機関は顧客との連絡をメールで行います。被相続人のメールが確認できるならネット系金融機関からのメールをチェックしましょう。取引が想定できれば、被相続人が亡くなったことを伝えて、その後の対応を問い合わせるとよいでしょう。
● 預金通帳上の取引をチェック!
一般金融機関の預金通帳をみれば、ネット系金融機関を利用していたかどうかはある程度わかります。多くの方はメインバンクは一般金融機関で、多額のお金はそちらの口座で取引し、必要に応じて、ネット系金融機関の口座に送金のうえ、使っているようですので、ネットバンクなどとの取引がわかるわけです。
簡潔に相続財産の捜索ポイントをご紹介しましたが、実際には思いの外、手間と時間がかかります。相続税の申告期限までは10ヵ月ありますが、財産調べだけでもこれだけ面倒で時間がかかるようなら、申告期限までにそれほど余裕がないのが現実です。
相続を迎えたら、相続税申告だけでなく、2次相続対策や遺産分割のコンサルティングまでの相談に乗ってくれる税理士などの専門家への早めの相談をおすすめします。