相続&贈与
「へそくり」といえば、家庭内で奥様が生活費を節約して夫に内緒で貯めたお金をいいます。このへそくりについては、ある民間の調査では主婦の38%が「へそくりをしている」と答えています。意外に少ない印象に感じますが、皆さんはどう思われますか?
今号では、世の中のへそくり事情と妻のへそくりが夫の相続財産になる話についてご案内します。
へそくりの平均額と目的は?
◆ 妻のへそくりは夫の1.8倍!
へそくりは主婦の特権とも見られがちですが、実は淋しいながらも夫もそれなりにへそくりをお持ちのようです。明治安田生命が「2017(平成29)年のへそくり平均額の男女比較(20代~70代)」の調査結果を発表しており、これによれば女性(妻)は約135万円で、男性(夫)が約74万円と、妻のへそくりは夫の1.8倍にもなるとか。家計を預かる妻の優位性といえるのでしょうか。
◆ へそくりの目的は?
配偶者に秘密裏に貯めたへそくりは、どんな目的で使うお考えなのでしょうか。
男女ともに「イザというときのため」や「将来のため」といった今後の経済的不安に備えるためという回答が大多数を占めています。ところが男女の違いを端的に表す目的がありました。目的の第2位にランクインした「自分の趣味のため」の回答は、男性の半数(複数回答)に上っており、女性の約2倍に。
男性としては、乏しい小遣いを必死に節約した賜物は自分のために使いたいというのが本音なのでしょうか。
妻のへそくりは夫の相続財産!?
女性(専業主婦)のへそくり平均額は135万円でしたが、結婚当初からやりくり上手でコツコツと貯めていれば相当な金額になっているものです。中には、数億円ものへそくりを持つ奥様もお出ででした。
もし突然、夫が亡くなったらそのへそくりはどうなるでしょうか。
● へそくりは相続財産?
夫婦で築き上げた財産は共有財産か、妻自身のものと思われているのではないでしょうか。もちろん、離婚などで財産分与を求めるケースではこうした考え方をしますが、相続税となれば話は違ってきます。
● 大切な点は、誰のお金を蓄えたのか!
妻が専業主婦で収入がないケースでは、へそくりを現金で持っていても、妻名義の預貯金であっても、資金源は夫の収入とみられ、それを蓄えたものとの判断で、夫の相続財産に組み込まれる可能性が高くなります。
税務調査で指摘されやすい現金や預貯金
2016年度の相続税の調査では、1万2,116件の調査対象のうち、申告漏れが全体の82%(9,930件)でした。申告漏れ財産の内訳は、現金・預貯金33.1%、有価証券(上場株式や債券など)16.5%と、金融資産の割合が最も多く、この傾向は長らく続いています。
これらの多くは被相続人(夫)の家族名義(妻・子)の財産のうち、実質的には被相続人(夫)の財産として認定された名義預金や名義株式の指摘が多く、へそくりも資金源が被相続人(夫)ならこの範疇に入り、税務調査で指摘されやすい財産となります。
結婚前に妻が自分で蓄えた預貯金などは妻固有の財産ですので、夫の相続財産にはなりません。とはいえ、へそくりとごちゃまぜになってしまえばその線引きが難しくトラブルの元となりがちに。その意味でも、いまのうちから夫婦の財産を明確に分けるなどの財産管理が必要です。