相続&贈与
年金世代(65歳以上)の割合は27.7%と過去最高で、世界でも最高率だとか。年金世代ばかりでなく、現役世代でも、結婚期間(戸籍上の婚姻期間)が20年以上のご夫婦もかなり多いことが想定されます。また、相続税の増税で相続税がかかる人が倍増し、特に、東京周辺などでは自宅を持っているだけでも課税対象となる時代になり、多くの方が相続税に敏感になりました。
そこで手軽にできて、奥様(配偶者)の永年の愛情に報いることまでできる、終の棲家(すみか)となる”ご自宅を贈与”されてはいかがでしょうか。今号では、その贈与の具体的な方法、贈与税が課税されずに済むための対応、ワンポイントアドバイスとメリットなどをご案内しましょう。
ダイヤに勝る、妻への自宅の贈与!
◆ お金がかからずにできる糟糠(そうこう)の妻への配慮
永年連れ添った空気のような間柄とはいえ、一方的に面倒をかけるばかりでは、熟年離婚リスクや介護放棄リスクにもつながりかねません。経済的に弱い立場にある妻からみれば、(順番からいけば)一人残されたときの将来への不安を解消して、安心できる状態にしたいと言うのが本音では。
そんな奥様への一生に一度の高価なプレゼントはいかが?
次の条件をクリアするだけで、無税で”自宅を贈与”できます。
● 贈与対象者: 法律上の夫(妻)から、妻(夫)への贈与
● 婚姻期間 : 20年以上(贈与の日現在)
● 贈与財産 : 自宅敷地・建物、自宅の購入資金
● 非課税範囲: 2,000万円(+110万円(毎年の基礎控除額))
◆ 配偶者への自宅贈与の際の留意点
● 注意1 婚姻期間には、内縁期間は含まれない!
一般に、婚姻期間は結婚式か、一緒に暮らし始めた時期をもとに計算すると思いがちですが、実際には婚姻届を提出・受理されてからの「籍を入れてからの正式な期間」を指します。つまり、内縁関係のあったご夫婦なら、残念ながら内縁期間を除いて”20年以上”の期間が必要です。
実は一度離婚されたご夫婦でも、同じ方と再婚するケースがあります。そんなご夫婦でも、離婚期間を除いて婚姻期間の合計が20年以上ありさえすれば、この特例が使えることに。
● 注意2 特例対象の自宅はこれだ!
特例の対象となる自宅は、つぎの不動産が対象となります。
★ 所 在 地: 日本国内
★ 対象不動産: 居住用の土地(借地権含む)か建物
★ 居住要件 : 贈与の翌年3月15日までに居住して、その後も住む見込み
自宅を購入・居住するための現金でもOKですが、上記同様に居住条件を満たす必要があります。
● 注意3 具体的な贈与の方法
上記の条件を満たしたら、奥様への自宅贈与は完了です。
★ 贈与範囲の決定:自宅土地建物の贈与だと2,000万円(ないし2,100万円)超なら、持ち分を贈与
★ 贈与契約書の作成・署名押印:契約書に署名と捺印をする。
★ 贈 与 登 記:配偶者への贈与の登記をする。
★ 贈 与 申 告:贈与の翌年3月15日までに贈与税の申告をする。無申告だと、贈与税がかかります。
賢い特例の活用法!
◆ 自宅の贈与特例は、現金より不動産がおトク!
自宅の贈与では、土地は路線価(一部地域は、倍率方式)で、建物は固定資産税評価額で評価されます。つまり、つぎのように時価より低くなるため、現金での贈与より自宅を贈与した方がおトクというワケです。
● 自宅敷地: おおむね時価の80%程度
● 自宅建物: 取得価格の60~70%程度(木造、鉄骨造など建物の構造により違いがある)
具体的に試算してみると、仮に贈与が2,000万円であれば、時価では2,500~2,800万円程度になりますので、自宅不動産の贈与がオススメといえます。
◆ 自宅の贈与は、土地と建物はセットの贈与がおトク!
不動産の方が有利なら、土地を優先すべきか、建物とするか、悩ましいところです。でも将来、自宅を売って都心のマンション暮らしや介護施設への入居などの可能性も考えれば、自宅の贈与は「土地と建物」を一緒にするのがオススメです。今どきは売却益は期待しづらいものの、もし出れば所得税などがかかります。ところが、建物の一部でも所有していれば、居住用財産の特別控除(最高3,000万円)が夫婦でとれたうえ、残る利益には低率での課税が受けられる余地が。
自宅贈与の3つのメリット!
● 相続財産の節減効果
妻への自宅の贈与により、夫の財産から2,000万円相当の財産が減り、相続税の節税に。
● 相続開始前3年以内の贈与でも、相続財産への取り込みは不要に
通常、相続の前3年以内に行った相続人への贈与は、相続財産に取り込んで相続税を計算しなければなりません。この「配偶者の自宅の贈与特例」を使った場合は、相続のあった年の贈与でも、相続財産に含める必要がないのです。つまり、相続ギリギリでもできる相続対策といえましょう。
● 愛情の再確認で、幸せなシルバーライフが待ち受ける!
実際にこの特例を使われている方は、夫婦の数に比べたらほんのわずか。今のうち、妻の永年の愛情に応えておき、シルバーライフを一緒にエンジョイできる環境作りが大切では。