相続&贈与
順調に増えている”教育資金贈与信託”
2013年からスタートした”教育資金贈与信託”は、2年経過の2015年3月末時点で契約件数12万件弱、信託設定額8千億円強(共に累計額)に上り、多くの方が関心を寄せていることがうかがえます。
一方で、これまでの生前贈与について目を向けるきっかけにもなりました。「孫に1,500万円も無税で贈与できる!」と喜ばれた方も多かったようですが、一件あたりの設定額をみると単純平均で677万円で、上限いっぱいの1,500万円を贈与している方は少ないとの見方も。
さらに専門家の眼からは「そもそも、なぜそんなに注目されるの?」と疑問の声も…。
そもそも祖父母から孫への教育費の贈与は非課税!
元々、祖父母が孫の生活費や教育費を負担しても、”通常必要と認められるもの”は贈与税はかかりません。これは意外に知られていませんでした。「収入のある両親がいるのに、祖父母が負担してもいいのか?」とのお尋ねもよくあります。両親ばかりでなく、おじいちゃん・おばあちゃんからのこうした贈与が非課税となる理由は、”祖父母が孫の扶養義務者”にあたるからです。
ちなみに、扶養義務者とはつぎの方を指します。
● 配偶者
● 直系血族、兄弟姉妹
● 家庭裁判所が扶養義務者と認定した3親等内の親族
● 3親等内の親族で生計を一にする者
これでは扶養義務がある範囲がわかりにくいのですが、ご自分(男性)を基準に考えると、★両親、★配偶者(妻)、★子ども、★孫、★自分の兄弟姉妹、★財布が一つで一緒に暮らしていれば、兄弟姉妹の子(甥や姪)まで扶養義務があります。以前、裕福な芸能人でも、親兄弟が生活保護を受けていることが発覚し話題になりましたが、離れて暮らしていようが扶養義務があり、生活資金などの応援をすべきだったのです。
贈与額にも注意が必要だ!
贈与税がかからないためには、”贈与する金額”にも注意が必要です。つぎの2点に注意しておけば、教育資金贈与信託を利用しなくても贈与税はかかりません。
◆ 通常必要と認められる金額
つぎのような費用なら、通常必要と認められる金額として、贈与税がかかりません。
● 生活費の場合:日常生活に必要な費用や医療費など
● 教育費の場合:学費(義務教育費でなくてもよい)、教材費、文具費など
◆ その時に必要な金額
ではまとめ払い、つまり、数年分の教育資金を生前贈与したらどうなるでしょう。もし年末に一部が孫の預貯金に残っていれば、その額は贈与税の対象になってしまいます。こんなリスクを考えれば、あとあと疑問を持たれぬよう、祖父母が学校などに直接送金する方法が確実です。
教育資金贈与信託は、「一度に1,500万円までまとめて生前贈与できる」点だけがメリットです。祖父母が元気なら、教育資金が必要となる都度に支払ってあげれば贈与税の心配がないうえ、孫の笑顔を何度もみることができます。
可愛い孫のために生前贈与するなら、贈与の都度に喜ばれ、家族のつながりが感じられる贈与の方法があることを知っておいても損にはなりませんね。