相続&贈与
シルバー世代のおサイフ頼み!
昨年12月30日付で税制改正大綱が発表され、4年限定の大型贈与制度が注目を浴びています。今度は結婚、出産、子育て資金を最大1,000万円まで子や孫へ非課税で贈与できる制度です。
◆ 資金の使いみちは?
贈与資金の使途はつぎのような費用とされていますが、いろいろ制限があるようです。
● 結婚式や新居の費用などの結婚関連費用
上限が300万円とされ、金額制限がつく模様です。残念ながら、お見合いなどの相手探しの費用には使えません。
● 出産費用や不妊治療費
● ベビーシッター代や子どもの治療費、保育費用など
子育て費用では、ベビーベッドやおむつなどの消耗品は対象外とされます。
【実際の贈与手続きなどは】
贈与は、資金を信託銀行などの子や孫名義の信託口座へ送金すればよく、もらった方は結婚資金の領収書などを信託銀行へ提示し、資金を引き出すことができます。
ところでこの1,000万円、 結婚資金で300万円使ったとして残りは使いきれるでしょうか?たとえば出産費用は、有名病院の個室で産んでも1回あたり100万円程度とそれほど高額にはなりません。また子どもの医療費は最近全額自治体負担というところも増えており、負担が出ない方も多いはず。
高額になりがちな不妊治療やベビーシッター代が必要な方には貴重な資金ですが、使いきれない可能性もありそうです。
◆ 贈与者が亡くなると、相続税がかかる!?
この制度を使った場合、贈与資金を50歳までに使い切れば贈与税はかからずに済みますが、つぎのケースでは贈与税か相続税の課税対象になってしまいます。
★ 残金があるうちに50歳になったケース
★ 贈与者(祖父母や両親)が死亡したケース
「教育資金の贈与制度」とは仕組みが違うため、注意が必要です。また贈与した祖父母や両親が”長生き”しないと、いつか税金がかかってくるため、あまり使い勝手はよくない印象です。
誰が新制度を使うのか?
実は、祖父母や両親であれば、もともと子や孫の扶養義務者であるため、結婚や子育て費用、教育費を負担しても贈与税はかかりません。贈与税がかかるのは、預金として残っていたり、土地などを取得したりした場合など「必要額を上回る資金」を贈与していたケースです。
従来通り”必要な額を必要な時に贈与”できる方は新制度を利用する必要はないでしょうが、つぎのような方なら活用余地が考えられます。
● 高齢の親などが認知症などで贈与できなくなる前に、贈与しておきたい
● 普通に贈与して無駄遣いされるよりは、用途以外で引き出せないから安心だ
● 孫が結婚するかどうかはわからないが、平等に贈与しておきたい など
とはいえ、生涯独身、子どものいない夫婦も増えており、有効利用されるかどうかは子や孫次第ということに。
シニア層は戦後の子ども時代や若い時代にいろいろ苦労されて今の生活があるはず、教育資金や住宅資金だけでなく結婚や子育てまでなんでも援助するというのは違和感をもつ方もいらっしゃるのでは?