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そろそろ忘年会の声がかかり始める時期。のんべえのためか、酒にまつわる”ことわざ・格言”はたくさんあります。「酒は百薬の長」はその最右翼。一方では、「酒は百毒の長(ことわざ辞典)」といった否定的なものまで存在しています。適量ならお酒は健康への影響が少ないといわれますが、検証してみましょう。
「酒は百薬の長」は本当!?
世界保健機関(WTO)では「飲酒が60以上もの病気を引き起こしている要因である」と指摘しています。大量飲酒を続けると健康にダメージを与えるというのは理解できますが、適度な飲酒量での健康リスクはどうなっているのでしょう(出典:厚生労働省e-ヘルスネット)。
◆飲酒と生活習慣病の関係
飲酒と生活習慣病との関係は、病気の種類により発症リスクパターン(下図)が異なっているようです。
● 高血圧・脂質異常症・脳出血・乳がんなど
これらの病気では、飲酒量と比例して健康リスクは高まっています。一番理解しやすいパターンです。
● 肝硬変
飲酒は肝臓に負担をかけますが、少量やほどほどに嗜む程度ではアルコールを分解でき、下図中段のように影響があまりなさそうです。ところが、飲酒の度が過ぎると急速にリスクが高まり、肝硬変に一直線に!
● 虚血性心疾患・脳梗塞・糖尿病など
下図右端のグラフは理解しがたい展開で、飲酒をしないより少量・適度な飲酒をした方が健康リスクが低い結果となっています。また、度が過ぎると、肝硬変同様に健康リスクが高まることを示しています。
このパターンは、グラフの形からJ字型曲線(Jカーブ)とかU字型曲線(Uカーブ)と呼ばれ、少量・適度な飲酒では健康面でのプラス効果が期待できます。
「酒は百薬の長」と言われる所以がこんなところにもあるのかも知れません。
飲酒と死亡率の関係は?
40~79歳の男女約11万人を9~11年追跡した「飲酒を要因とするコホート研究(注)」(下図)によれば、総死亡では男女ともに1日平均”23グラム未満(日本酒1合未満)”が最もリスクが低くなっています。
すべての病気を対象にした”総死亡”でも「適量の飲酒が死亡率を下げる」結果が出ており、これこそ「酒は百薬の長」といわれる所以のようです。
グラフと死亡率の関係では少量飲酒で健康リスクが上がる病気よりも、心疾患など健康リスクが下がる病気の方が死亡率に与える影響が大きいため、全体の総死亡率としてはJ字型曲線(Jカーブ)のパターンを描くようです。加えて、高齢者の認知症でも「少量の飲酒は発症リスクを抑える」という研究結果もあるとか。
(注)コホート研究は分析疫学での研究手法の一つで、ある要因にさらされた集団(喫煙者)とさらされていない集団(非喫煙者)を追跡研究し、研究対象の疾患(肺がんなど)にかかる確率を調査比較する研究。
節度のある適正飲酒を心がけよう!
このように「酒は百薬の長」はインチキ格言ではないことが研究結果でわかってきました。といっても、大量の飲酒はもちろんですが、病の種類によっては少量の飲酒でも健康リスクが高まる事実も判明しており、ご自分の体調に合わせての注意が必要です。
そうは言いつつも、飲酒はコミュニケーションツールのひとつでもあり、日々のストレスから解放してくれる楽しみの一つでもあります。「酒は飲んでも飲まれるな」のとおり、愉快に楽しめる程度なら一生涯飲酒が続けられそうです。